不妊治療の実際
不妊治療は、まず「不妊」を知ることから
不妊症とは
特に避妊していないカップルが2年以上妊娠にいたらない場合を不妊症といいます。女性は通常1ヶ月に1回排卵があります。このときタイミングよく性交していれば、妊娠する確率は、結婚1年以内で8割、2年以内で9割にのぼります。ただし、これはあくまでも目安です。カップルの年齢なども考慮して、子供を望んでいるのに、結婚後1年経っても妊娠しないようなら、医療機関で不妊症検査を開始した方が良いかもしれません。
不妊の割合(who世界健康機関)
不妊症の原因は41%が女性側、24%が女性:男性ともにあり、24%が男性側、11%が原因不明となっています。このことから不妊症の原因が男性にある夫婦は約4組に1組、女性:男性両方に原因がある夫婦も4組に1組となります。よって、男性が原因と考えられるものは約2組に1組。不妊症全体の約半数にのぼります。そのため、不妊症検査は夫婦ともに受けることが原則といえます。
不妊の原因
絶対的不妊は比較的まれです。これに対して、卵管が狭い、男性の精子が乏しいなど、絶対不妊とは言い切れないけれど妊娠可能とも判断出来ないという中途半端な症状がいくつも重複している例が多く見受けられます。
排卵に原因のある不妊
妊娠しやすい女性には1ヶ月に1回のペースで排卵が起こり妊娠のチャンスが訪れます。この排卵が、数ヶ月に1回になることを、稀発排卵といい、まったく排卵が起こらなくなることを、無排卵といいます。こうなると妊娠は望めません。
排卵は、脳の視床下部、脳下垂体、卵巣の3者がうまく連携して初めて起こります。このいずれに異常があっても無排卵となります。また視床下部は大脳皮質の影響を受けますので、慢性のストレスや感情の起伏も無排卵の原因となります。
また、排卵しても、その卵子が妊娠可能な卵子である確率は30%程度と言われています。高齢などで卵子の質が低下している場合、妊娠可能な卵子が排卵してくる確率は低下します。
- 体重の増減(ダイエットなど)による無排卵
- 内分泌機能の低下(視床下部の機能低下:脳下垂体の機能低下)
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群とは無排卵症の原因として多いものです。
慢性的な男性ホルモン過剰状態が特徴です。 - 卵巣の機能低下、異常
- 高プロラクチン(PRL)血症
プロラクチン(PRL)とは、乳汁分泌ホルモンとも言われるもので、脳下垂体から分泌され、母乳が出る仕組みになっています。授乳期間中は排卵が起こりにくくなります。
高プロラクチン(PRL)血症とは、このプロラクチンの分泌が増加する状態で、無排卵や黄体機能不全の原因となります。 - 甲状腺機能異常
卵管に原因のある不妊
卵管が詰まったり癒着したりして、卵子や精子が通りにくくなることによる不妊は全体の約30%を占めます。原因としては、クラミジア感染症などによる腹腔内の炎症、子宮内膜症などありますが、全く原因がわからないこともあります。
子宮に原因のある不妊
排卵された卵子は、卵管の膨大部で精子に巡り会い受精します。こうして誕生した受精卵は、卵管内を運搬され、子宮腔にたどりつきやがて子宮内膜にもぐりこんで着床します。子宮内に異常があると、受精卵が着床できなくなったり、胎児が順調に発育できなくなったり、流産の原因になったりします。子宮の異常としては、生まれつき子宮の形に異常がある場合や、子宮筋腫などの良性腫瘍がある場合、子宮内腔の掻爬などが原因で癒着が起こっている場合などが考えられます。
男性に原因のある不妊
以前は、不妊症の原因は女性にあると考えられていました。しかし、男性に原因がある場合も多いことが知られるようになり、今では不妊症全体の50%前後を占めると考えられます。精液検査で問題がある場合は、「乏精子症」「無精子症」「精子無力症」「奇形精子症」などに分類されます。
原因不明の不妊
健康な夫婦が妊娠を望んで2年以上経過し、一般的な不妊検査を行っても、異常所見が認められない場合を原因不明の不妊症と位置づけています。これは不妊症全体の10%~20%の割合です。このような場合は、卵管に通常の検査ではみつからないような異常がある、あるいは、卵子か精子の受精障害があると判断し、体外受精を試みます。
