妊娠中の運動について
妊娠高血圧症や妊娠糖尿病の予防・治療に、運動は効果的
妊娠高血圧症

妊娠高血圧症に対する運動の予防効果は認められています。特に肥満や高血圧家族歴のある妊婦は、切迫流早産の恐れがない限り積極的に運動をとり入れましょう。また、軽症の妊娠高血圧症候群(*)の場合は、運動直後の血圧が重症域に達していなければ主治医と相談の上で運動は実施可能です。重症の妊娠高血圧症候群の場合は安静療法が必要となり、運動療法は行えません。
*妊娠高血圧症候群の重症度分類(日本妊娠高血圧学会による)は以下のとおりです。
- 軽症:
- 収縮期血圧140mmHg以上160mmHg未満または
張期血圧90mmHg以上110mmHg未満 など - 重症:
- 収縮期血圧160mmHg以上または
張期血圧110mmHg以上 など

妊娠糖尿病
血糖値は中強度の歩き(速歩き)でも十分に低下することから、妊娠糖尿病の予防・治療にも身近な運動としてウォーキングなどは効果的です。毎食後に「ややきつい」「やや楽である」と感じる程度の運動を、小休止を入れながら30分以上行うことが理想ですが、短時間でも血糖降下作用は認められています。ただし、妊娠糖尿病の治療にインスリンを使用している場合は、運動により低血糖を起こす危険性があるため、主治医とよく相談して実施してください。
目崎先生からのアドバイス

妊婦さんの運動の意義として、健康維持や体力向上は言うまでもありませんが、気分転換や仲間づくりなどのメリットもあります。スポーツ教室などを通じて知り合った仲間と出産後も赤ちゃんを連れて集まり、悩み事などを打ち明け合ってコミュニケーションを深めることは、産後のうつやマタニティーブルースの予防にも効果があります。ベビースイミングなどに参加すれば、仲間とのコミュニケーションに加え、親子一緒に楽しく運動習慣を継続することもできます。
運動は、楽しんで行うことが基本です。しかし、お母さんが気持ちよくなればいいわけではありません。お腹の赤ちゃんが息苦しくなるような強度の強い運動を避けることが大切です。運動前後に、必ず胎動やおなかの張りをチェックするようにしてください。また、運動を行う際、または運動を行った後に不安なこと、気になることがあれば、産婦人科の先生に相談してみましょう。
継続的に運動を行っている妊婦さんは、安産になる傾向もみられます。ぜひ、適切な運動を行って楽しく妊娠生活を過ごし、安産を迎え、そして出産後も元気に運動を続けていただきたいと思います。